将棋の魅力は 年齢性別関係なく本気で戦えて 友達になれるところ

女流棋士 室田伊緒(女流二段)

室田伊緒 女流二段
日本将棋連盟関西本部所属
出身 愛知県
師匠 杉本昌隆八段


経歴
2004年10月 – 女流育成会入会 2005年10月1日 – 女流2級 2006年4月1日 – 女流1級 2008年4月1日 – 女流初段 2014年9月10日 – 女流二段

11月19・20日、日本将棋連盟主催の「将棋フェスティバル in宜野湾」が、宜野湾市民体育館にて開催されました。会場にはプロとして活躍される棋士が4名来場され、憧れの棋士に会いたい将棋ファンが大勢集まりました。今回ジュクタンでは、女流二段のプロ棋士、室田伊緒さんへのインタビューが叶いました。中学生でプロを目指し、勉強と両立して夢を叶えた室田さんのストーリーは、多くのジュクタン読者の方にとって励みになるのではないでしょうか。

将棋との出会い 最初のライバルは弟だった

私が将棋に初めて触れたのは、小5の秋。プロになる人の中では少し遅めですね。3歳下の弟が通う将棋教室に母と送迎に行った時に、先生から「お姉さんもやってみない?」と誘われたのですが、断っていたんです。なんだか難しそうだし。でも、ある時初心者が参加できる大会に誘われて、参加賞のえんぴつに釣られて参加してみたのです。すると結果は2勝2敗。ここで4敗していたら多分私はプロになっていなかったと思います。将棋は初心者でも意外にできるんだと気づいたらハマってしまい、最初は弟をライバルに指しまくり、半年後にはピアノも水泳も全てやめて将棋にのめり込みました。いろいろ習いごとはしていましたが、自分からやりたいと思ったものは将棋が初めてでした。

プロを意識したのは中3の時 それからはプレッシャーの連続

中学では囲碁将棋部がなかったので、友人を誘って作りました。最初から10名くらい部員が集まって、うち3名は女子でした。将棋は男性がやるものというイメージだったのですが、側に女子もいたのが励みになりました。小学生の頃に大会で女性のプロ棋士をみて漠然とした憧れは持っていましたが、本格的にプロを意識したのは中3の春。全国大会で優勝して、更に上を目指すにはプロしかないなと。プロになるには、女流棋士を目指す女子の中で戦って成績を残さなければいけないのですが、そのための交通費、宿泊費などはもちろん自腹。これは地方在住者にとって不利になります。親に負担をかけていることを感じて、どうにか最短でプロにならなければとプレッシャーを感じていました。また中3の夏には、杉本昌隆八段へ弟子入りも。兄弟子らと指すようになって、将棋への向き合い方も変わりました。楽しいだけでおおらかにやっていた将棋を、突き詰めるようになったのです。中3といえば、高校受験もあります。大会前は将棋に集中し、学校のテスト前は勉強に集中。なんとか両立して高校は推薦で合格。そして16歳で念願のプロになることが出来ました。高校生活とプロ棋士としての両立は難しく、対局のために学校は休みがちに。当然勉強も遅れてしまいましたが、プロ棋士としての活動が認められ、AO入試で大学へも進学することが出来ました。

将棋の魅力

将棋の魅力は沢山あります。まず、年齢性別関係なく楽しめること。そして、本気で戦えること。勝ったり負けたりすることで敵対心が生まれるのではなく、仲良くなることが出来るのです。対局の後の感想戦で仲良くなって、長年文通をしていた友達もいます。また、将棋は子どもの頃から始める人が多いので、大人になっても長い付き合いが続きます。大会などで知り合った日本全国の友達と、お互い将棋を続けている限りまたどこかで会えるというのも魅力ですね。今回も、この将棋フェスティバルで20年振りに友人と再会できたのです。これはすごく嬉しい出来事でした。

「負け」との向き合い方

負けが続くと凹みます。公式戦で負けたら夜眠れなくなるほど悔しいし、スマホの将棋アプリだって負けたら凹む。でも、甘いものを食べて寝たら忘れます。こういった切り替えは、若い頃の方が下手でしたね。一回負けたら人生終わりだというくらい凹んでいたころもありました。でも、藤井聡太くんでも負けることはあるんですよ。彼は以前、負けたショックで机に突っ伏してしまったことがありましたね。大人びた受け応えをするので忘れられがちですが、まだ20歳。負けが受け入れられない時だってあるんです。でも、受け入れられないくらい悔しいって決して悪いことではありません。それだけ打ち込んでいるという事ですから。本気でやっていなければ、負けても悔しくはありません。負けるのが嫌で辞めてしまう人もいますが、負けを乗り越えた人だけがプロになれるし、プロで居続けることが出来る。プロにならなくても将棋から離れなければ、大人になって再会を喜ぶことができるのです。

将棋フェスティバルに参加した 沖縄の子どもたちを見て  

こんなに沢山の将棋好きなお子さんが集まってくれるとは思わなかったので驚きました。女子も多くて嬉しく思いました。女流棋士は以前に比べて多くなったとはいえ、まだまだ少ないので普及を頑張らなくてはと思っています。女子が将棋を続けられるのは、環境に恵まれているか(周りに同性の将棋友達がいるなど)、男性の中で戦える強さを持っているか。とはいえ、今は「男性だから」「女性だから」という考え方が減っていますね。これはとてもいい傾向だと思っています。  沖縄出身のプロ棋士はまだ居ません。今日の将棋フェスティバルに参加したお子さんの中から初の沖縄出身プロ棋士が誕生したら嬉しいですね。このような大会への参加は、将棋へのモチベーションを保つ上でもとても大切です。初心者でも参加出来る大会があったらどんどん参加して欲しいと思います。今回は、子ども将棋大会で優勝した具志堅くんと対局したのですが、彼は段位のある中での優勝者。私も本気で向き合い、沢山ある手の中で、一番辛いものを出しました笑。でも彼はきっとへこたれてはいないと思います。この経験をバネに努力を続けて、いつかプロ棋士になってくれたらと思います。